第9話「ボビーさんの結婚式【後編】」【元ネタ解説】

読みもの

 

 

ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第9話「ボビーさんの結婚式【後編】」についてです。

 

 

仕事を忘れて幸せに浸るはずの結婚式が、結局いつもの仕事になってしまった…そんなボビーさんの悲哀を描いたお話。

ボビーさんの結婚式

 

 

 

今夜はセックス・マシーン

 

マンガの脚注に「今夜はセックス・マシーン」と書きました。私これ邦題だとずっと思ってたんですけど、勘違いか妄想でしょうか、正しくは単に「セックス・マシーン」だったようです。こういう出所不明の勘違いって、自分の中の無意識のセンスが思いがけずにじみ出てしまったようで大変恥ずかしいですね。

 

 

日本では「ゲロッパ(ゲロンパ)」でおなじみですね。タイトルのインパクトとゲロッパのキャッチーさがウケたのか、日本では最も知られたJB曲と言えるでしょう。

 

 

 

原題は「Get Up I Feel Like Being Like A Sex Machine(ゲット・アップ・アイ・フィール・ライク・ビーイング・ライク・ア・セックス・マシーン)」…長い! リリースされた1970年といえば、JBファンクの全盛期です。こちらの記事の下の方でもちょろっと触れてます。

 

 

しかし日本人にも有名な「ゲロッパ」も、当時のセールスで見てみると私たちの印象ほど爆売れというわけでもないようです(もちろん売れているのですが)。アメリカでは「JBといえばセックス・マシーンだろ!」というわけではないのでしょうね、それは端々で感じます。

 

 

ビルボードでも、ポップチャートでは見つけることができなかったので10位圏外だったのではないでしょうか? もちろん当時ブラック・ミュージックがポップチャートの上位に上り詰めるというのは、今よりもずっとハードルが高かったのですが。とはいっても、同年にジャクソン5やスライ&ザ・ファミリーストーンはポップチャートのトップでその名を見つけることができました。このへんを考えると、以前書いたジェームス・ブラウン氏の楽曲は聴きづらいという話は、アメリカ本国でも現れてたのかあと感じます。

 

 

一方、R&Bチャートを見ても同曲がトップに躍り出るということはなく、3週連続で惜しくも2位だったとのことでした(もちろんこれもスゴイことなんですが)。ジャクソン5やスライはもちろんR&Bでもチャートイン。ほかにアレサ・フランクリンなどもトップを獲得している中、JBがR&Bチャート1位をゲットしたのは「Superbad」という曲によってでした。これもイカした曲ですね〜。

 

 

Can I Take ‘em to the Bridge!!? ー Go Ahead!!

 

ボビーさんの結婚式

 

神父に扮していたファンキー社長が叫ぶ「Can I Take ‘em to the Marriage?」(結婚させちゃっていい?)は、同曲での煽り文句「Can I Take ‘em to the Bridge!!?」(サビに行くぞ!)をもじったものです。

 

 

ただ、Take to the Marriageは英語的には間違ってるような気がします。

 

 

ちなみに「’em」というのは「Them」を略した表記です。ヒップホップの歌詞などでもよく見かけます。

 

 

 

ジェームス・ブラウン氏の「サビに行くぞ!」の掛け声に対して、ボビー・バード氏は「Go Ahead!(よっしゃ!)」「Yeah!(ガッテンだ!)」と返します。何度か応酬したあとに「テッテッテッテッテッテッテッ」が入り、サビが始まるわけです。

 

 

 

もっとも「セックス・マシーン」はほぼ単一のループで延々と繰り返される曲なので、サビと言っても、ポップミュージックに見られるようなドッカーーンとブチ上がる絶頂感みたいなものはないです。ファンク独特の悶絶しそうな絶頂感には満ちてますけどね。

 

 

おまけ

 

 

実はボビー・バード氏の人柄については特に何か知っているという状況ではありませんでした。ただ、その経歴や写真を見るにつれて「この人は本当、いい人そうだなあ」とか「気が良すぎて損してそうだな」なんていう漠然としたイメージを持つようになり、マンガではけっこう手痛い目に遭う役回りになりました。

 

 

 

映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」劇中で描かれていたボビー・バード氏が、私がイメージしていたバード氏そのものっていう感じの描かれ方をしていたので(実際はどうだったのかわかりませんが)嬉しかったですね。

 

 

人柄が顔付きにもにじみ出た、素敵な人だったんだろうなあ。けっこう、JBよりボビーのほうが好き! て人も多いですね。

 

 

今回も読んでくださり、ありがとうございます。来週(2015.07.26)はちゃんとマンガ公開します。

 

JAY

JAY

1984年生まれのファンク・マンガ・ライター。ソウルの帝王ジェイムズ・ブラウンを元にした「ファンキー社長」をはじめ、ファンク・ヒップホップをサンプリングした4コママンガを描き続けています。漫画アクションで「ファッキンJAYのマイルド・スタイル」を連載中。

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