こんにちは、JAYです。ソウルの帝王ジェームス・ブラウンをサンプリングしたマンガ「ファンキー社長」を描いています。

2015.05.06
第1話「ファンキー社長の就業規則」
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2019年12月。ニューヨークはサウスブロンクスで開催された「[R]evolution of Hiphop」なる展覧会に行ってきました。
なお、本記事に関連してこちらでも書いていますのでお時間ある方はぜひご覧になってみてください。どちらかというと、↓のほうが読んでほしいですのでぜひこちらも。

ニューヨーク近辺でヒップホップかファンクのイベントが無いかとを探していたところ、「[R]evolution of Hip Hop」という展示イベントを見つけた。 このイベントは2023年にサウスブロンクス地区でオープンする予定の「ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム」が主催しており、その建設予定地のすぐ近くにあるショッピングモールの一角を使って行われていた。 ヒップホップ博物館、建設計画始動 サウスブロンクスに | Daily Sun New Yorkヒップホップ博物館、建設計画始動 サウスブロンクスに 【13日付amニューヨーク】ブロンクス区サウスブロンクスに
ヒップホップ生誕の地サウスブロンクス
サウスブロンクスはヒップホップ生誕の地として知られています。そのため街中には地元のクルーが描いたグラフィティも数多く残っており、ミュージアムに行けばグラフィティを地元の誇るべき歴史として展示しています。
例えば、今回の「[R]evolution of Hiphop」が開かれている場所から徒歩20分ほどのところには「ブロンクス・ミュージアム」なる施設があります。以前、写真家のHenry Chalfantによって撮影されたグラフィティの数々を展示した「Art VS Transit, 1977-1987」展が開催されていました。
グラフィティをただの違法な落書き・破壊行為(ヴァンダリズム)としてだけではなく、文化芸術の活動であり、なぜ住民たちにとって必要だったのか、その背景をしっかりと伝えています。
「落書きは悪いことだろ!」とか「法律なんて知ったことか!グラフィティ最高だろ!」とか、そういう一面だけで片付けない。優れたグラフィティに触れて感動する中で、じゃあどうすればベストなのか、ということを自分の頭で考えさせるような展示になっているのです。
[R]evolution of Hiphop 会場への道
今回のイベントは、カーティス・ブロウの「Christmas Rappin’」リリース40周年を記念したイベントなのだそうです。
チケットは無料ですが事前予約制だったのでネットで予約しようとしたところ、12月20日はカーティス・ブロウ本人がいるとのこと。おお、じゃあその日にしよう。
ということで当日、開催場所の「ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム(以下UHM)」をGoogleマップで検索して向かってみると…
「この先にある」とGoogle。ええ〜、めちゃくちゃ不穏…
改めて確認すると私の勘違いで、開催場所だと思っていたUHMは単に今回の主催者という位置付けで、ミュージアム自体は絶賛建設中なのでありました。別にヤバい場所だったわけじゃなく、工事現場だったんですね。
ということで、正しい開催場所へ向かいます。すぐ近くのショッピングモールの一角で開催されているそうです。
入口を抜けると、いきなり目の前にカーティス・ブロウがいました。来場客と談笑しています。
話しかけようと思ったのですが、彼は誰かと一緒に外に出てしまい、そのまま戻ってきませんでした。写真どころか挨拶すらできず。
展示のようす
入口正面には地下鉄を模したオブジェ。
そのまんま、休憩スペースとして活用されています。
床にはヒップホップのルーツに欠かせない要素やミュージシャンの名前がタギングされています。
もちろんジェイムズ・ブラウンの名前も。
スタッフは3〜4人くらいいて、展示物の説明をしていました。ギャング団の対立がブレイクダンスによって平和裏に着地した話、アフリカ・バンバータの功績、ヒップホップがまだその名で呼ばれる以前の、カルチャー創世記の記録。
「ヒップホップは黒人が生み出したものという通説があるけどそれは歴史修正主義的な考えで、実際にはラティーノの存在なくして生まれ得なかった」という話を日本で聞いていましたが、こちらの展示ではしっかりとラティーノのことも触れてありましたね。
というか当時のヒップホップ写真集を見ても、映画「ワイルドスタイル」を見ても、ラティーノばんばん出てくるので、ひょっとして歴史修正主義的なのってスパイク・リーと日本人くらいなのでは…? という気がしました。どうなんだろ。
正直、展示点数は少なくてじっくり見ても30分で見終わるくらいの規模でした。
ヒップホップ5大要素の紹介です。4大要素に「Knowledge(知識)」が加えられているのがポイントです。
脇に置いてある30インチくらいの大型タッチパネルでは、なんと5大要素のキャラたちとチャットができます。チャットといっても、選択肢から選んでいくタイプの簡易なものですが。
エレメントたちが質問を投げかけてきます。「ソウルとヒップホップどっちが好き?」みたいな感じで、延々ジャンルの好みを聞かれます。
そして20問くらい答え続け、「まだ終わらないのかな」と思いながら全ての回答が終わったとき、「Please Wait」の表示。しかし、そのまま2〜3分待っても画面は一向に変わらずでした。
スタッフに聞くと「動かない? たまにフリーズするんだよね」とのことです。
やり直しは面倒だったので、諦めました。
B-BOYに声をかけてみた
展示会場の中で、ひときわ目立つB-BOYスタイルに身を包んだ男性を見つけたので声をかけてみました。レジーという名の、とても感じの良い青年でした。
彼はジェイムズ・ブラウン大好きで、家にサイン入りのレコードが3枚もあると話してくれました。そのうち1枚は父親から受け継いだ「Black Caesar」だそうです。最高な遺産。残りの2枚のタイトルは忘れました。
ジェイムズ・ブラウンに対する彼の思い入れは強く、「俺の故郷サウスシカゴのローラースケートパークでは常にジェイムズ・ブラウンが流れていて、耳にしないことは無い。ローラースケートとジェイムズ・ブラウンはひとつなんだ」と教えてくれました。彼はそういう、ファンクやヒップホップに合わせてローラースケートでダンスしたりトリックを決めたりするカルチャーが大好きなようです。
サウスシカゴは治安が非常に悪いと言われていて、スパイク・リー監督が同地を舞台にした映画「シャイラク」を製作したこともありました。この「シャイラク」は、シカゴ(Chi-City)の殺人事件の発生率がまるでイラク(Iraq)のように高いことから付けられたスラングです。
一口にサウスシカゴといっても広いのでレジーの故郷が同じエリアなのかはわかりませんが、彼の話に興奮するとともに胸の詰まるような思いがしました。
彼に「ジェイムズ・ブラウンで何が好き?」と聞かれたので、「いろいろあるけど、うーん、Make It Funkyかな」と答えたところ「パート1? 2? あれ4まであるでしょ、全部足すと15分くらいになるもんね」と言ってきたので「ゲェ、そこまでこだわって聴いてないや」と申し訳なくなりました。
やたら詳しいのでお喋りを聞いていたら、なんとNasが主宰するレーベル「Mass Appeal」のスタッフさんとのこと。
現在建設中のUHMはMass Appealの事業で、今回の[R]evolution of Hiphopはマイクロソフトの協賛のもと開催しているのだそう。「うわあ、Nasやり手だなあ」と素朴な感想を抱きましたよ。
Nasについてはこちらを御覧ください。

2017.04.09
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さらに、カーティス・ブロウはUHM設立プロジェクトの最高責任者の1人なのだそうです。だから在廊していたんですね。
80年代と90年代に生ける伝説となったアーティストたちが、今このような形で地域にヒップホップを伝えていこうとしている、こうした行為こそヒップホップそのものだよなあ、と感動しながら帰路につきました。もうちょい告知頑張れ! という思いもありますが。
UHMはヒップホップ生誕50周年となる2023年の開館を目指し、建設中とのことです。