ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第5話「ダニーさんのマント・ショウ」についてです。
クライマックスで観客を絶頂へと誘うマント・ショウ
マント・ショウとは、ジェームス・ブラウン氏のライブにおける名物パフォーマンスです。力尽きて崩れ落ちるブラウン氏に、MCのダニー・レイ氏がマントをバサッとかけます。一連の流れはこんな感じです。
JB「イィーーーー!!!(渾身のシャウト)」
→ドサッ(力尽きて膝を落とす)
→ダニー・レイ氏がマントをかける
→ズル・・・ズル・・・(ステージ脇に向かってゆっくり歩く)
→バサッ!!(JB、立ち上がりマントを振り払う)
→ステージ中央に戻って歌い続ける
こちらの動画で1分55秒くらいのところから見ていただければお分かりいただけます。
この「精魂尽き果てて・・・からのー!!」というコテっコテの大味な演出が、聴衆たちの中でシンプルなお約束として定着し、マントを振り払うたびに会場がひっくり返るような歓声が上がるのです。
マント・ショウのはじまりは1959年ごろと言われています。ツアー中、アトランタにあるホテルのテレビでプロレスを観ていたとき。レスラーのゴージャス・ジョージが相手をぶっ倒したあとに歓声に応えてお辞儀をし、リングを回りました。トレーナーが彼を追いかけて肩からマント(というかガウンみたいなもの?)をかけたところ、ジョージはそれを振り払ってまたお辞儀を繰り返しました。そのシーンをみたブラウン氏は「これだ!」と閃きます。
・・・という話が有名なのですが、実はそれよりほんのちょこっと前から「プリーズ・プリーズ・プリーズ」のラストではコートを肩からかけるという演出をやっていたようです。
当初はメンバーのコートを使っていましたが、毎度汚れたりクリーニングに出したりするのをメンバーが嫌がって自分のコートを隠し始めたのだとか(これは面白いですね)。それでコートをやめてタオルにしたそうで、タオルを観客に投げるなどして盛り上げていました。そのすぐあとに上記のゴージャス・ジョージの演出から着想を得て、現在知られているかたちになったそうです。
初め、そのへんに売られているローブを買っていたそうなのですが、やがて特注のマントを用意するようになりました。ひとつのショウの中で何度かマント・ショウを披露し、そのたびに違う柄のマントを使ったといいます。素晴らしい演出ですね。
マント・ショウあれやこれや
マント・ショウは英語ではCape Act(ケープ・アクト)と言います。
忌野清志郎もマネて、「ガウン・ショウ」という演出を取り入れていました。また、2013年を席巻したあのNHKのドラマ「あまちゃん」でも、羽織を振り払い「ジェームス・ブラウンかよ!」とツッコまれるというシーンがあります。
日本にも数々の影響を残しているマント・ショウ。その最大の引き立て役であるダニー・レイ氏は、1960年ごろからジェームス・ブラウン氏の楽団に合流したのだそう。ということは、1959年のマント・ショウ誕生期には他のメンバーがマントをかけていたのでしょうかね。いつからレイ氏がマントをかけるようになったのかは、わたしはまだ調べきれていません。
2014年末にはオリジナル・ジェームス・ブラウン・バンドが来日しました。そのメンバーの中にはMCダニー・レイ氏の姿もあり、ライブの最後、スタンドにセットされたマイクにマントをかけて終演する、という極めて粋な締めくくりを見せてくれました。
これは観ていて、一番グッときました。
2015年夏には同バンドがサマーソニックに出演すべく再来日の予定(本記事執筆時2015年6月)。真夏の炎天下、またあの名司会と見事な演出が見られるかと思うと、すでに胸は高鳴り、腰のシェイクも止まりませんね。