こんにちは、JAY(@f__kinjay)です。
ソウルの帝王ジェームス・ブラウンをサンプリングしたマンガ「ファンキー社長」を描いています。
2017.11.05
ファンキー社長まとめ読み【1話〜10話】
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ラッパー2Pac
(↑のイラストは、発売中の「今日から使えるヒップホップ用語集」のために描いた2点の2Pacのうち、使わなかったほうです)
2Pacというと、ヒップホップをちょっとかじったくらいの人でも知らない者はいないというほどにカリスマチックなラッパーです。
容姿のハンサムさ、独特の声色とリズムによるラップのかっこよさはもちろんなんですが、自らをTHUG(ワル/ギャングスタ)と称し、「君主論」を著したマキャヴェリの名を自らのアーティスト名に使ったこともあるなどの過激なイメージを抱かせる一方で、母や女性への思いやりを曲にするなどの優しさも垣間見せる(女性蔑視ラップも多いのですが)、そのギャップから感じさせる人間味が彼の魅力を引き立てているのかもなあと思います。
ちなみに、2016年に公開された映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」にもちらっと登場します。
96年、凶弾に倒れるまでに多数の楽曲を残しており、死後にも未発表曲のリリースが何度かありました。
名曲もたくさんあり、Bruce Hornsbyの「The Way It Is」を使った「Changes」、Bobby Coldwellの「What You Won’t Do For Love」を使った「Do For Love」など、大胆なサンプリングによるキャッチーでメロウなトラックにハードな歌詞が乗っているという作品が人気ですね。
今回は、私の好きな2Pacの曲を紹介します。
私の好きな2Pacの名曲1「Brenda’s Got a Baby」
「好きな」というと、ちょっと違うかもしれません。でも最も強く印象に残っている曲です。
1991年のアルバム「2pacalypse Now」から「Brenda’s Got a Baby」。2Pacのソロデビュー曲でもあります。
私がギャングスタ・ラップを熱心に聴くようになるきっかけになった曲です。聴いたのは18歳の頃でした。
タイトルを直訳しますと「ブレンダは赤ん坊を授かった」ですかね。シリアスでヒリついた雰囲気のイントロでは女性シンガーのRonieceが叫びます。
「ブレンダが子どもを産んだって聞いたよ」から始まり、ブレンダは自分の名前を書くこともできず(教育を受けていないという意味なのか、それとも知的障がいがあるということなのか?)、母親はいなくて父親はジャンキー、12歳で妊娠、便所で出産し、産まれた子をゴミ箱に捨てたこと・・・と、ブレンダを取り巻く状況が次々と明かされていきます。彼女を妊娠させたイトコはブレンダを置いて去り、彼女は立ち行かなくなって売春婦となった末に、ストリートで殺害されてしまうというストーリーテリングになっています。
18歳だった自分がこの「Brenda’s Got a Baby」に衝撃を受けたのは、これがゲトーで実際に起きた出来事に基づいて書かれたラップだったからです。
けっこうガンガン喋るラップが多く、押韻のために発音をちょっといじったりすることの多い2Pacですが、この曲では一語一語を丁寧にラップしています。描写も極めて直接的でわかりやすいので、ゲトーやラップへの予備知識が無くても歌詞の内容が理解できます。ほかの曲と比べると単語や文法もけっこうちゃんとしているので、英語が苦手な方もちょっと腰を据えて歌詞を翻訳しながら読んでいってほしいなと思う一曲です。
私の好きな2Pacの名曲2「Words of Wisdom」
コレも同じく「2Pacalypse Now」からですね。
トラックはHerbie Hancockの名曲「Chameleon」からのサンプリング。太いベースにおしゃれな鍵盤が乗った、スマートながらも力強いファンクサウンドです。
タイトルの意味は「格言」ですかね。直訳すると「知己に富む言葉」て感じでしょうか。曲の1/3くらいは2Pacの語りです。
自分たち黒人をアメリカの厄介な問題だと自虐的に表し、どんなにアメリカが自分たちを消し去ろうとしても自分たちは戦う、と表明します。そしてリンカンの奴隷解放宣言以後も変わらない人種差別の構造、貧困や教育格差、麻薬汚染などゲトーの社会問題を放置するアメリカ(AmeriKKKa)を「レイプ犯」「殺人犯」などとして痛烈に批判します。
かつての「ブラック・イズ・ビューティフル」のように、自分たちが自らの存在に劣等感を抱くように仕向けられていることを自覚し、自尊心をもつように訴えるのです。このへんは、2Pacの母親をはじめ親類にブラック・パンサー党のメンバーがいたことが影響している考え方・・・なんでしょうか。
アウトロでは、自分やPublic Enemy、KRS-ONE、Ice Cubeなどを「アメリカの悪夢」と表現し、白人たちのアメリカに自分たちが手を下す、というメッセージを残して終わります。そうして聴くと「格言」というか「布告」って感じもしますね。
2Pacソロデビュー以前〜Digital Underground時代
ヒップホップリスナーにはよく知られていますが、ソウル・ファンク好きにはそうでもないかも? 2Pacはソロデビューする前は「Digital Underground」というグループの一員として活動していたんです。
で、そのDigital Undergroundのサウンドなんですけど、ファンク・・・特にPファンクやZAPPなんかの影響が濃くてかっこいいんですよね。
こんなんモロですよね。たまりませんよね。
私の好きな2Pacの名曲 まとめ
今回挙げた2曲に限らず、2Pacは社会に対する問題意識や批判をラップすることがけっこう多く、「California Love」や「Hit Em Up」のようなギャングスタ性が強く出ている名曲もある一方で、非常にコンシャスで知的な一面も持ち合わせています。
ちなみにゲトーを描写した傑作映画「JUICE」にも出演していて、イイ奴だったのがとある事件をきっかけに狂気をどんどん加速させていく恐怖のキャラクターを見事なまでに演じきっています。この映画を見て、役としてではなく2Pac本人のイメージとも重なるなあと思った人も多いんじゃないでしょうか? っていうくらいにバチッとハマり役なんですよね。まあ、この役からはコンシャスさは感じられないですけどね。
映画といえば2017年冬には、2Pac初の伝記映画である「All Eyez On Me」が日本で公開されます。
ラップだけでなく、その人物像や人生の足跡にも数多くのエピソードがある2Pac。すでにアメリカでは公開されており、賛否いろいろあるようですが、どんな内容になっているのか今から楽しみですね。