ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第8話「ボビーさんの結婚式【前編】」についてです。
前回のボビー・バード氏とヴィッキー・アンダーソン氏の話から続き、二人は結婚します。
実際にはどんな式を挙げられたのか(そもそも式を挙げたのかどうか)はわかりませんが、教会で手をつないで歩く二人の先にいたのは神父に扮したファンキー社長だった・・・というお話。
ジェームス・ブラウン氏が牧師役をこなす!映画「ブルース・ブラザーズ」
この元ネタはご存知の方も多いかと思われます。1980年公開の映画「ブルース・ブラザーズ」のワンシーンからです。
「ブルース・ブラザーズ」は当時だけでなく35年が経った今でもブラック・ミュージックファンにはたまらない作品です。
登場人物はジェームス・ブラウン氏のほか、アレサ・フランクリンやレイ・チャールズなどのそうそうたるミュージシャンたちが登場し、最高のミュージカル・コメディを魅せてくれます。
孤児院を救うための金集めに奔走するジェイク(ジョン・ベルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)の兄弟が、ある人の勧めで訪ねた教会で説教をカマしていたクレオファス・ジェームス牧師(ジェームス・ブラウン氏)によってバンドに目覚めるという流れ。
「朝起きた時、妙な音を聴いた!」
「鳴り響く、魂の声だ!」
額に激しく汗をかき説教を続けるクレオファス牧師。やがて演奏はヒートアップし、聴衆たちも手拍子を始めて踊り出します。
完璧なフォーメーションで見事なダンスステップを踏み、さらにはバク転を披露するほどに熱狂。クライマックスでクレオファス牧師がジェイクに向かって「きみは光を見たか!?」と問い叫ぶ。
もちろん現実の教会では、一般聴衆がここまでクオリティの高い騒ぎ方をするようなことはないでしょうし、霊なるものが宿ったジェイクが啓示を受け音楽に目覚める様子はもちろん多大にコメディとして描かれてはいますが、決して100パーセントふざけている演出ではありません。
ゴスペル…霊なるものの降臨
クレオファス牧師が説教していた「Triple Rock Baptist’s Church(トリプル・ロック・バプテスト・チャーチ)」でも見られた大勢が音楽に合わせて歌い踊る様子は、いわゆる「礼拝」として多くの日本人たちがイメージするものとは全く雰囲気の異なるものではないでしょうか。
※バプテストというのはキリスト教プロテスタントの1宗派です。また、プロテスタントとはカトリックから分離したさまざまな宗派の総称を指します。
バンドを駆り出して盛大に歌われるゴスペル。その場には確かに何か神的・霊的なものが存在し、人々を絶頂のトランス状態へと導いていくのだそうです。
映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」でも、幼少期のブラウン少年が外れにある教会で歌って踊りまくる人たちの中に生きるチカラを見出している様が描かれています。「天使にラブソングを」などでも同じようなシーンが見られますね。
これらを踏まえると、ブルース・ブラザーズでのトリプル・ロック・バプテスト教会でのシーンが大げさではありながらも単なる演出ではないということが分かると思います。
日本でも、教会でなくとも地域のホールとかでゴスペルやってたりしますので、ご興味ある方は是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。ジェームス・ブラウン氏も自伝の中で、自分の根源にある音楽はゴスペルだということを話しています。
おまけ
◆自伝でついでに思い出しましたが、ジェームス・ブラウン氏は「ブルースは別に好きじゃない」と自伝で言ってました。へえ〜マジかいな、60年代の楽曲はブルース進行の曲も多いので、これは意外でした。
◆エルウッド役のダン・エイクロイドはなんと映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」でジェームス・ブラウン氏の右腕マネージャーであるベン・バート役として登場しました。往年のファンには感激なことだったでしょう。
◆歌で思い出しました。私は中学のとき音楽の授業で全然やる気がなかったんですが、当時なにも知らなかったスティービー・ワンダーの曲を歌うように言われたとき、あまりにカッコよくて全力で歌っていたら激怒した教師に呼び出され「なんで他の歌の時はマジメにやらんの!」と怒鳴られてしまいました。懐かしい。
おしまい