こんにちは。ジェームス・ブラウンを題材にしたマンガ「ファンキー社長」作者のJAYです。
2017.11.05
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今回は「ジェームス・ブラウン氏のことをまるで知らない人にも聴きやすい曲」というテーマで、いくつかの曲を独断で選んで紹介します。
はじめに 〜とっつきにくい、ジェームス・ブラウン氏の楽曲群〜
有名なフレーズは「ゲロッパ」ですが、ほんとにそれくらいしか知られていない。その理由はたぶん、ジェームス・ブラウン氏の生み出してきた楽曲が私たち日本人の耳にはとっつきにくいから、というところに集約されるのではないかと考えています。
とっつきにくい。そう、そうなんです。
そこで今回は、ファンク本来のかっこよさを語りたい気持ちは抑えて、より多くの人にとっての「聴きやすいジェームス・ブラウン」を、4つの切り口から紹介して参ります。
1.聴きやすいライブ曲
2.聴きやすいディスコ曲
3.聴きやすいバラード
4.聴きやすい全盛期の曲
1.聴きやすいライブ曲
ジェームス・ブラウンといえばライブ!!年360日はライブだったというジェームス・ブラウンの魅力を存分に堪能することができます。
どのライブも最高ですが、一番聴きやすいのは、ブーツィ・コリンズも在籍している1971年パリ・オリンピアでのライブでしょう。JBキャリアの中でも最も灼熱した爆烈ファンクです。
この動画はライブの一部だけを切り取ったものですが、ジェイムズ・ブラウンの熱いシャウトとそれに呼応する相棒ボビー・バードの阿吽の呼吸ぶりだけで多くの人が心奪われるんじゃないでしょうか?
全編通して聴くと、日本のヒップホップを聴かれる方は「アッ!ブッダブランドのアルバムでこんな感じの曲紹介を聞いたことあるぞ」と思うようなあの曲や、「アア!ライムスターのB-BOYイズムと同じベースだ」となるあの曲なんかも次々登場します。
冒頭の「Brother Rap」からすでにクライマックスであるかのようなエキサイティングな展開にグイグイ引き込まれますよ。
後にPファンクで大人気を博すブーツィ・コリンズ(なんと公式LINEスタンプも出ています)がベースを弾く唯一のライブ盤とされ、胃袋の中でグルグル暴れて喉元までせり上がってくるような圧倒的なベースラインには悶絶を禁じ得ないでしょう。
冒頭ではしっかりと味わい深いボーカルを聞かせ、後半へ進むにつれて息をつく暇もなく次々と繰り出される怒濤の楽曲群には、無限大のファンクパワーを感じずにはいられません。
これが収録されているのが「LOVE,POWER,PEACE(ラブ・パワー・ピース)」。これは至高のライブ・アルバムです。
2014年7月には未公開部分も含めた拡張版LP3枚組が新たにリリースされました。CDでも入手しやすい音源なので、ぜひオススメしたいです。
そしてライブ盤として外せない最も有名な1枚がコレ「Revolution of the mind(ソウルの革命)」ですね。
ジェームス・ブラウンは、ニューヨークの殿堂「アポロ・シアター」で何度もライブをやっています。そのうちのいくつかがライブ盤としてリリースされているのですが、その中で最も評判が高いのがこちらでしょう。非常に脂の乗った1971年の録音ですが、すでにブーツィは脱退済み。
そのためもあってか、前述の「Love, Power, Peace」がもつ石油ヒーターのような前面にグイグイ来る熱さよりも、低いところで蠢くような低音ファンク、遠赤外線ストーブのようなジワジワと攻めてくる感じの雰囲気になっています。
ヒップホップ界隈ではサンプリングソースとしても大人気のこちら、「Love, Power, Peace」と併せて非常に聴きやすいので入門編には是非どうぞ。
2.聴きやすいディスコ曲
1970年代後半からファンクのアクを薄めて洗練され、より多くの人に愛されたディスコ音楽が市場を席巻します。
「ディスコのことはもう見抜いた」という渋い名言を残したジェームス・ブラウン氏(このセリフからは氏の自信満々で負けず嫌いな性格が出ていてとても好きです)も時代の潮流にのってディスコ寄りの楽曲を多数リリースします。それらは確かに、従来のどファンクな楽曲よりも耳に優しく聴きやすい仕上がりでした。
中でも多くの人にとって聴きやすいのは1979年「Too Funky in Here(トゥー・ファンキー・イン・ヒア)」ではないでしょうか。イントロの四つ打ち、コーラス満載のサビ、メロディだってキャッチィです。※厳密にディスコと言い切れるかは微妙ですが、そこはまあ良しとしていただけると幸いです。
このアルバムに入っていますね。
同じく上記のアルバムに収録されている「Living in America(リヴィング・イン・アメリカ)も映画ロッキー4の中で使用されたり非常に耳に馴染みやすいですし、Africa Bambaataaとの共作「Unity(ユニティ)」なんかもカッコよく聴くことができるかもしれませんが、やっぱり聴きやすさという点ではToo Funky in Hereのほうが上だと感じます。
3.聴きやすいバラード
歌はうまくない、と言われているのをたびたび目にするジェームス・ブラウンですが、何をもって歌うまいというのかは人の基準によって異なるのかもしれませんね。私の耳にはジーンときます。
これはカバーですけど、「Sunny(サニー)」。ジャズな伴奏がまた、サニーなのに雨降りのような雰囲気出してて最高じゃあないですか。なお、後半からはバラードというか少々激しくなります。
↓のアルバムに入ってます。余談ですがこのアルバム、ほかの曲もジャズで構成されているジェームス・ブラウン氏には珍しい作品でして、ファンク生誕の曲と言われる「Cold Sweat」のジャズ版セルフカバーなんかも収録されているので是非ご一聴。クールな演奏にブラウン氏の熱いシャウトが絶妙な塩梅で噛み合っています。
ジェームス・ブラウンの歌声、かすれてて、くもってて、すごく味があっていいと思うんですけどね。素人考えですが、歌のうまさも一定以上を超えると好みの問題なんていう気もしますね。
ちなみにこのサニーには、別バージョンのカバーもあります。こっちはバラードとは程遠い展開になるのですが、初めて聴いた時はその独創的なアレンジに度肝を抜かれました。
ジェームス・ブラウン氏のバラードはけっこう初期に多いですね、「Please,Please,Please」「Try Me」など。あとは、カバー作も多い。オリジナルだと「It’s a Man’s Man’s Man’s World(イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド)」とかが一番知られているでしょうか。最近では男子フィギュアスケートでエラッジ・バルデ選手が演目に使用したことでも話題になりました。
4.聴きやすい全盛期の曲
いつをジェームス・ブラウン氏の全盛期とするかは人によって異なると思うので、ここも私の主観になってしまいますが。私はやはり69年〜72年くらい。この頃の曲は聴きやすく、かつカッコイイものが溢れていて絞るのに悩みましたが、聴きやすいのはこれでは。
曲中、メインで繰り返されるフレーズが単純にキャッチィでかっこいい。これが聴きやすいと思った一番の理由です。ホーン、ギター、ベース、ドラムがそれぞれガッツリ主張しながらも絶妙な塩梅で噛みあっています。
この動画はやや音が聴こえづらい感じなので、気になった方はぜひレコーディング盤である下記の「In the Jungle Groove」を聴いてみてください。このジャケットは若いヒップホップ世代にもかなり知られているんじゃないでしょうか? そう、世界一のサンプリングソース「Funky Drummer」が収録されているからですね。
In the Jungle Groove / James Brown
さいごに
長くなりましたが、これでおしまいです。私が今回選んだ「聴きやすい」の基準は、きちんとした展開があることと、メロディがキャッチィであるということです。と同時に、私自身がジェームス・ブラウン氏の音楽を知っていく中でスッと受け入れることができた楽曲でもあります。
ショー・ビジネス界の一番の働き者という異名を持つだけあって膨大な楽曲のリリースがあるジェームス・ブラウン氏。今回紹介したのはそのほんの一端に過ぎませんので、ぜひぜひいろんな曲を聴いてほしいなと思います。
これらの曲を流しながら、ジェームス・ブラウンの逸話をサンプリングしたマンガ「ファンキー社長」をぜひご覧ください。
2015.05.06
第1話「ファンキー社長の就業規則」
第2話はこちら! 第1話の元ネタ解説はこちら! 小ネタの宝庫「ファンキー社長の編集室」はこちら! ...
参考文献