ファンキー社長

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JAY、アメリカ南部を走る!【4】アル・グリーン牧師の礼拝に参加してみた

      2016/06/17

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「ファンキー社長」の作者JAYがアメリカ南部を長短期で走る! 旅日記の第4回。

 

 

第1回はこちら ・ 第2回はこちら ・ 第3回はこちら

 

 

 

メンフィスにて、牧師アル・グリーンの教会へと向かうJAY。果たして、謁見なるか?

 

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メンフィス最終日はさわやかな朝日とともに

 

 

9月20日(日)、晴天。気温はやや低めで肌寒さを感じた。

 

 

 

朝の8時半、タクシーのアル・ムハマドはホテルに迎えに来てくれた。

 

 

 

「今日の予定は?」

 

 

 

私は答えた。

 

 

 

「まずはアル・グリーンの教会。そのあとはソウル・フードのレストランで昼食を。そしてスタックス博物館だね」

 

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濃厚な1日になりそうな気がしていた。

 

 

 

タクシーはダウンタウンを離れ、郊外の道をひた走る。10分ほど南へ進むと、周囲は木々が豊かに生い茂る閑静な住宅街に。さすがにアメリカ、潤沢な土地をふんだんに活用した平家と庭で、一軒一軒の敷地がだだ広い。

 

 

 

そんな宅地の中にひっそりと佇んでいたのが、アル・グリーン牧師の「FULL GOSPEL TABERNACLE CHURCH」。

アル・グリーンの教会

アル・グリーンの教会

 

私が到着したのは9時、教会には鍵がかかり、車も一台も停まっていなかった。

 

 

 

「まあしばらく待ってりゃ誰か来るだろう。じゃあ礼拝終わったら電話してくれ。たぶん13時ごろには終わるだろうし」

 

 

 

アルはそう言い残してアクセルを踏んだ。

 

 

 

彼の車のエンジン音が次第に遠ざかり、やがて消えた。辺りには、鳥のさえずりだけが響いていた。

 

 

 

私は、言葉にできないほどの不安に襲われた。

 

 

 

これまで何度も敗北を喫したこの旅。よもや開かないなんてことは…と怯えながら、何時に開くともしれぬ教会を前に座り込んだ。

 

 

 

10分後、恐怖を紛らわすために周辺を歩いてみようと決めた。

 

アル・グリーンの教会

 

 

 

しばらく歩く。

 

 

 

Around Al Green's Church

 

 

 

何もない。住宅と、樹のみである。

 

 

 

 

Around Al Green's Church

 

GoogleMAPを頼っても、何もない現実だけが表示される。

 

 

アル・グリーン教会の周辺地図

星印がアル・グリーンの教会。周辺には、何もない。

 

 

 

困ったことに、尿意をもよおしてきた。私は、GoogleMAPで公園(Lanier park)だと記された空地に入り、自分の背丈ほどもある茂みに身を隠し、ひっそりと用を足した。実は便意ももよおしていたのだが、さすがに自由の国といえども程々にしておかねば神罰が下るやもしれないと案じ、これをぐっと堪えた。

 

 

 

10時。教会に戻ると車が一台。中には女性が乗っていた。

 

 

 

「アル・グリーン牧師の説教を聴きに日本から来た。何時ごろ開くかわかる?」

 

 

 

「11時ね。そのへんで待ってなさい。」

 

 

 

女性のリアクションの薄さから、日本からの観光客というのも珍しくはないのだろう。

 

 

 

10時半。牧師の一人(アル・グリーンではない)が到着したらしく、教会の鍵を開けて「入っていいよ」と招いてくれた。無論、たちまちトイレへ駆け込み便意を開放した。

 

 

いよいよ始まった、日曜教室と礼拝

 

 

排泄によって安堵と開放感で満たされた私は大聖堂へ。すでに何人かの礼拝者がいて、先ほどの牧師が聖書の教えを説いている。私は調子をこいて、最前列の席に座ってみた。

 

 

 

牧師が参加者に呼びかけ、聖書を音読するよう促す。

 

 

 

 

 

 参加者は該当箇所を読み上げる。

 

 

 

「この場面ではどのような行動を取るとよいか?」

 

 

 

らしきことを牧師が問い、

 

 

 

「〜〜〜だと思います」

 

 

 

参加者が答える。

 

 

 

「イグザクトリー(そのとおり)!!」

 

 

 

指をパチンと鳴らし、つまり聖書が言わんとしてるのはそういうことだ、と解説する(たぶん)。

 

 

 

何度か指のパチンを聞いているうちに時計は11時になった。ステージの裏からバンドやコーラスがゆっくりと現れる。ステージには四脚の椅子が横一列に間を空けて並べられており、なにやら「四天王の間」と言えばしっくり来るような雰囲気をかもしだしていた。

 

 

 

椅子にはその教会の偉い人たちが座るのだろう。一番左の椅子には「Bishop Al Green」とゴシック書体で縫い込まれたマントのような布が掛けてある。

 

 

 

おお、ブチ上がるではないか。ここには紛れもなく、アル・グリーン師がおわすのだ。

 

 

 

 

次第に人が集まり、総勢150名ほどになった。その半分以上が白人で、首からツアーのストラップを下げている者も多くいたのは驚いた。観光名所であったとは。

 

 

al green 教会

 

 

程なくして、バンドの演奏が始まった。

 

 

 

3、4人ほどだろうか。入れ替わりマイクの前に立ち、一曲ずつ熱唱する。ツアー客による飛び入り参加もあるようで、金髪リーゼント・Gパン・Gジャンのまさにロックン・ローラーな風情の男がギターを片手にロックを披露したりなど、「そんな馬鹿な」とも思えるような、極めて混沌とした光景が展開された。

 

 

 

一通り歌が終わり、我々もフウと一息ついたところ。

 

 

 

ステージの奥から、ゆっくりと歩いてくる男があった。

 

 

 

静かな歓声。私も立ち上がり、拍手をした。

 

 

 

そう、アル・グリーンの登場。私が知っている姿よりも丸っと太っていたが、まさしくアル・グリーンその人だった。

 

 

 

「みなさん、どこから来ました!?」

 

 

 

グリーン師は礼拝客に問いかける。

 

 

 

「ブラジル!」「キャリフォルニア!」「キャナダ!」「オーストラリア!」次々と答える。

 

 

 

私が「ジャパン」と言おうとしたところに、斜め後ろから「ジャパン」の声。おお、日本人もいた。

 

 

 

グリーン師はしばらく喋る。よく聞き取れなかった。そして演奏が始まり、師はマイクの前に立った。

 

 

 

聴衆のうち何名か立ち上がり、手拍子を叩く。アル・グリーンのゴスペルライブが始まった!

 

 

 

変わらない歌声! マイクを使わずに肉声でもシャウトを聴かせてくれる。そしてあの、撫でるような優しいファルセット。おお、アル・グリーンがここに!

 

 

 

ただ、誰もトランス状態になったり躍り狂うといったようなことはなく、比較的落ち着いて音楽に乗っていた。

 

 

 

演奏は意外に、あっという間に終わった。4曲ほどだろうか。

 

 

 

そこからはグリーン師の、長いお説教タイムが始まった。

 

al green

al green

 

 

前座の牧師が指をパチンと鳴らすなら、グリーン師は話の区切りで「エイメン!」と叫ぶ。

 

 

 

ユーモアたっぷりに教えを説き、聴衆からはたびたび大きな笑い声が上がっていた。もちろん私には、何を言っているものかは皆目見当がつかない。

 

 

 

これは正直に言いたい。さすがに退屈だった。何しろ、この説教は実はこのあと13時半まで続く。11時に登場したので実に2時間半、グリーン師は祭壇に立っていたのだが、歌ったのはほんの20分ほど。残りは全て説教で、何を説いているやら言葉の壁に立ち塞がられた私にはさっぱりであった。

 

 

ふと、タクシーのアルを呼ぶ手段を検討しなくてはならぬことに気づいた。

 

 

 

説教の最中ではあったが聖堂を抜け、外にツアーバスのドライバーがいたので電話を貸してくれと声をかけた。かなり嫌そうに「おまえ自分のあるだろ」と言うので「ノー、これ日本でしか使えないの。貸して!」と説得。しぶしぶ貸してくれた。

 

 

 

電話を返すと、聖堂からけたたましい演奏の音が! しまった、まだ歌があったかと急いで戻ったところ礼拝はクライマックスを迎え、まるでライブのアンコールのように目一杯の音をかき鳴らしていた。

 

 

 

その目一杯の音の中をグリーン師はゆっくりと、ステージの奥へ消えていった。

 

 

 

おお・・・終わったか・・・しかしほとんどお説教だったなあ・・・

 

 

 

おっと。余韻に浸っている場合ではない。すぐさまグリーン師を探しに聖堂を出て教会の中を探してみた。しかし、残念ながらグリーン師を見つけることは叶わなかった。

 

Al Green's Poster

代わりに見つけた、教会内のポスター。

 

 

 

10時半から入って13時半。実に3時間。長かった…

 

 

なお、礼拝中はやめとこうという思いが働き、写真は残っていない。

 

 

お昼は伝統あるレストランでソウル・フードを

 

 

次は待望、ソウル・フードのレストランでのランチ。

 

 

 

道中、アルに聞いてみた。

 

 

「アル、昼飯はまだ?よかったら一緒にどう。」

 

 

 

「いや、おれは毎日1食しか食べないんだよ」

 

 

 

「そっかあ〜」

 

 

 

「それにおれムスリムだから、ハラールしか食べないしね」

 

 

 

「そ、そうだよね」

 

 

 

「大体ソウルフードなんて健康に悪くて食ってらんねえぞ」

 

 

 

「ふ、ふ〜ん…」

 

 

 

向かったのは「Four Way Soul Food Restaurant」

ソウル・フード

 

なんと60年近い歴史を持つという、老舗のレストランだ。

 

 

 

頼んだのは、キャットフィッシュ(ナマズ)のサンドイッチ、フライド・イエロー・トマト、ブラック・アイド・ピー。

 

 

ソウル・フード、キャットフィッシュフライ

ナマズのサンドイッチ。噂に聞いたとおり、淡白な味だ。生臭さもなく美味しい。少しもっちりしたような食感だった。

 

 

フライド・イエロー・トマト

次はフライド・イエロー・トマト。大変アブラっこい。

 

ブラックアイドピー

ブラック・アイド・ピー(黒目豆の煮込み)。黒目豆は縁起がいいらしく、新年などにも食べるそうである。

 

 

このほか、サザン・ナントカ・ティーなるお茶を注文したのだが、これが吹き出すほどに口に合わなかった。砂糖を大量に入れた紅茶のようなものなのだが、中国で売っているペットボトルの甘いウーロン茶と同じがごとき風味であった。

 

 

 

ここで会計をしてくれた店員のオバサンは、私が「ジェームス・ブラウンの生きた土地に触れたくて南部に来た」という話に一番感動を示してくれた人だった。やはり、音楽への関心は人それぞれである。

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ファンは必見・スタックス博物館は、往年のミュージシャンたちのお宝がザクザク!

 

 

最後はスタックス博物館。タクシーのアルには「なんとかして、また電話するから」と伝えて一旦別れた。

 

 

 

あのオーティス・レディングを輩出しトップレーベルの座に躍り出たものの、オーティスが飛行機事故によって亡くなってしまったのを機に次第に衰退の途を辿るというスタックス。

 

 

ソウルの名門STAX

 

博物館内にはオーティス・レディングはもちろん、ブッカーT、バーケイズ、サムアンドデイヴなど、数々のアーティストのレコード原盤(JBのものも!)や衣装が展示されていた。

 

 

 

ブッカーTが「グリーンオニオン」録音時に使ったというハモンドも展示されていた。

 

 

 

最も派手な逸品は、アイザック・ヘイズのキャデラック・エルドラド。回転テーブルの上に展示され、グルグルグルグル延々と回り続ける黄金のキャデラックは、彼の全盛期の羽振り良さを物語っているかのようで、成金趣味とて滋味深い。

 

 

ひとしきり見終えて外に出たら、タクシーのアルが待っていてくれた。「来てくれたの!」「そろそろ出てくると思ってね」

 

 

タクシーのアルとの別れ。そして、誰が待つとも知れぬオーガスタへ

 

 

グレイハウンド・バスステーションへ。ここで1日半世話になったアルとはお別れ。最後に+5ドルせびられたが、世話になったから素直に渡した。

 

さらばメンフィス

 

この数時間後には旅の最終最大の目的地であるオーガスタ行きのバスに乗る。

 

 

 

そう、この日記の第1回の最後のほうで記したように、オリジナル・ジェームス・ブラウン・バンドのギター、キース・ジェンキンスに会うために、旅程を変更してこれからオーガスタに向かうのである。

 

 

 

キースからは「日曜の遅くにオーガスタに戻る。そのあとなら会えるかも」というメールが届いており、「ならば月曜の昼間からオーガスタにいる。会えそうなら連絡してください」と返事をして以来、連絡がない。

 

 

 

果たして会えるのだろうか…期待とも不安ともいえない微妙な鼓動の高鳴りを感じつつ、バスに乗った。

 

 

 

メンフィスを20時に出て、オーガスタに着くのは翌日10時。アメリカというのは実に広い。これは東京〜福岡間よりもちょいと長いくらいの距離である。むろん車中泊で向かうため、風呂や歯磨きは諦めることにした。

 

 

今回はここまで。次回が最終回! 旅の最終日、オーガスタの街でJAYはキースに会えるや否や!こちらからどうぞ

 

 

 

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