第12話「ゲット・オン・ザ・バス」【元ネタ解説】

読みもの

 

ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第12話「ゲット・オン・ザ・バス」についてです。

 

ジェームス・ブラウンいぬ間に努力するフレッド・ウェズリー

 

ファンキー社長の号令とともに始まった社員旅行の実態は、バスでの過酷な移動によるチトリン・サーキットでした。

 

 

スパイク・リー監督「ゲット・オン・ザ・バス」

 

タイトルの「ゲット・オン・ザ・バス」とは、1997年に公開されたスパイク・リー監督の映画タイトルから引用してます。

 

DVDも出てます。↓

ゲット・オン・ザ・バス [DVD]

 

 

映画「ゲット・オン・ザ・バス」は、ネイション・オブ・イスラムのルイス・ファラカン氏の呼びかけによってワシントンDCに100万人が集まった1995年のワン・ミリオン・マン・マーチ(百万人の大行進)を題材にした群像劇です。

 

 

 

行進に参加するためにいろんな事情や思想をもった黒人たちがバスに乗る。陽気に歌を歌ったり、身の上話をしたり、小さな言い合いや激しい意見の対立が起きたり、中には白人に迎合し黒人を非難する典型的な「アンクル・トム」の姿も・・・小さなバスの中に見えるのは、それこそが映画公開当時のアメリカがもつ問題などをすべて内包したような、日常の1コマでした。

 

 

 

スパイク・リー監督は人種差別を中心にさまざまな政治的・社会的な問題に対して鋭く切り込んだ作品が多いということで知られています。一番有名なのは「ドゥ・ザ・ライト・シング(Do the Right Thing)」でしょうか。

 

 

 

この「ゲット・オン・ザ・バス」もそうなんですが、アメリカでの日常そのものの中に深く沈み込んでいる大きくて重たい問題がじわ〜っと出てくる瞬間・・・その小さなにじみを切り取って、作品にしているって感じがします。

 

 

 

ちなみに人種差別など以外にもふつうの娯楽映画もいろいろ作っていますね。わたしは特に「インサイド・マン」という映画が好きです。正直、一度見たときはよくわからなかったのですが、そのあと解説を読んでから二度目を見ると、この上なく楽しめました。オススメです。

 

 

 

スパイク・リー監督はかつて、こう話したそうです。「僕は『黒人監督』ではない。『監督』だ。」と。

 

 

 

彼が評価される理由の中から「ジャーナリズム(社会派だとかオピニオンリーダーだとか)」が消えるとき。それが彼への本来の評価がなされたときであり、アメリカが抱えている大きな問題が何かしらの解決を見たときなのかもなあ・・・と思う次第でありました。

 

 

パパはヘマしない

 

さてと、映画「ゲット・オン・ザ・バス」の話題、もう少し続けます。

 

 

 

やはりスパイク・リー氏もジェームス・ブラウン氏に多大なリスペクトを抱いているんだなあと。それがわかるのが、作中のこんなワンシーン。

 

 

 

ワシントン行きのバスの乗客が揃いました。バスが走り出すと、運転手(だったと思う)は問います。

 

 

 

「ジェームスブラウンのない旅とは!?」

 

 

 

乗客の1人が答えます。

 

 

 

「しけた旅だ」

 

 

 

そしてテープの再生スイッチをカチリ。1974年「パパ・ドント・テイク・ノー・メス(Papa don’t take no mess)」が流れます。

 

 

 

「パパはヘマしない。パパはヘマしない。」乗客の大合唱の中、発車するバス。大好きなシーンです。

 

 

 

ここでいうパパてのはブラウン氏本人のことですね。ブラウン氏の曲には他にも「パパズ・ガッタ・ブランニュー・バッグ」など、自身をパパと呼称したものがあります。

 

 

 

ちなみに、映画「ジェームス・ブラウン〜最高のソウルを持つ男〜」でも、この「パパ・ドント・テイク・ノー・メス」のフレーズが登場します。

 

 

 

ボスへの不満がピークに達したバンドメンバーが練習をボイコットしようとするシーン。スタジオの中で何の準備もせずに物言いたげな表情でブラウン氏を見つめるメンバーたち。突如翻された反旗に怒り心頭となったブラウン氏は、隣にいた息子に「パパ・ドント・テイク・ノー・メス(おれのやり方を見せてやる)」と言い、そのままメンバーをクビにしてしまいました。

 

 

 

この曲、ご存知ない方は是非聴いてほしいですね。「ゲロッパだけじゃない。「聴きやすい」JB楽曲選」では挙げてないので「万人に聴きやすい!」とも言い切れないのですが、哀愁漂うギターリフの上澄みが耳を惹きつけ、底流ではゴロゴロとうねり流れるグルーヴが腰を捉えて離さない、悶絶必至の名曲です。

 

 

 

この曲も後世のミュージシャンたちにいろいろとサンプリングされてます。一番有名なのはジャネット・ジャクソンの「ザッツ・ザ・ウェイ・ラブ・ゴーズ(That’s the Way Love Goes)」でしょう。「こんな使い方するとこんな雰囲気になんのか〜!」と衝撃を受けました。

 

 

 

ほかにもビズ・マーキーの「ベイパーズ(Vapors)」なんかが知られていますね。

 

 

 

どちらの曲もギターがまんま使われていて、聴けばすぐわかると思います。

 

 

 

おまけ 〜JB専属プロデューサー フレッド・ウェズリー〜

 

これ、どこで読んだんだっけなあ。忘れてしまって確実ではないので「おまけ」扱い。フレッド・ウェズリー氏は、ジェームス・ブラウン氏の衣装をプロデュースしたりもしてたそうです。

 

ジェームス・ブラウンいぬ間に努力するフレッド・ウェズリー

 

もちろん、自ら衣装を縫うということはなかったと思いますけどね。

 

 

 

フレッド・ウェズリー氏てのはトロンボーンやっててthe JB’sでのリーダー的存在でした。今でも現役バリバリのリビング・レジェンド(生ける伝説)なんです。

 

 

 

ウェズリー氏のご経歴などは、また別の機会にゆっくりご紹介したいと思います。

 

 

 

今日はここまで。Good God!

 

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JAY

JAY

1984年生まれのファンク・マンガ・ライター。ソウルの帝王ジェイムズ・ブラウンを元にした「ファンキー社長」をはじめ、ファンク・ヒップホップをサンプリングした4コママンガを描き続けています。漫画アクションで「ファッキンJAYのマイルド・スタイル」を連載中。

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