第15話「ファンキー社長のソウル・フード」【元ネタ解説】

読みもの

 

 

ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第15話「ファンキー社長のソウル・フード」についてです。

 

 

アメリカのソウルフード

 

「ソウル・フードを食うぞ!」

 

 

ということで、南部の美味しいソウル・フード、ガンボジャンバラヤのオゴリを期待したメンバーたちでしたが、出てきたのは我々日本人のソウル・フード、ラーメン(ヌードル)でした。

 

 

 

ここで描いているのはズバリ、日清食品が1992年に発売した『日清カップヌードル・MISO味』です。

 

 

 

ご存じの方も多い話ですが、ジェームス・ブラウン氏はカップヌードルMISO味のCMキャラクターとして出演し、当時日本でも知られていた「セックス・マシーン」のサビをセルフパロディした「ミソンパ!」をシャウトしたのであります。

 

 

 

「ミソンパ!」「ミソミソ!」合いの手を叫んでいるのは、残念ながらボビー・バード氏ではありませんね。このCMの放送時期は、JBの元相棒ボビー・バード氏と再度手を結んだ時期と重なるのではないかと思われますが、さすがにそこまでの予算は持てなかった、あるいはそこまでこだわらなくてもいいよねっということだったんでしょう。

 

 

 

CM後半は「ミソカニーパ!」「カニミソ!」などのタイトな語感でグルーブがエスカレートし、勢い重視の展開に。

 

 

 

カニのエキスですっきりみそ味。最後はご自慢の白い歯をキラリと光らせ「・・・ミソンパ」と微笑むミスター・ブラウン。

 

ジェームスブラウンはかつて日清カップヌードルのCMに出ていた

 

極めて強烈な色味で構成されており、音だけでなくビジュアルでもハンパなきインパクトを食らわせられます。

 

 

 

さてこのCM、オンエアされたのは1992年。

 

 

 

天下のJBがカップヌードルのCMで「ミソンパ」とは、一見まるで似つかわしくないイメージの仕事だと感じます(逆にこのCMだけでJBを知った多くの方は、ミソンパのイメージしか無いでしょうけど)が、この1992年とは、ジェームス・ブラウン氏にとってどのような年だったのでしょうか。ちょっと見てみましょう。

 

 

 

1992年のJB・・・どん底からの回帰

 

 

 

実はこの時期、ジェームス・ブラウン氏にとってはかなりシリアスな時期でした。

 

 

 

なぜならその前年の1991年まで、彼は分厚い塀と有刺鉄線の向こう側で監獄生活を送っていたからです。

 

 

 

1988年、ドラッグを使用しラリっている最中に、奥さん(3番目の奥さんであるエイドリアンさん)に対してドメスティック・ヴァイオレンスをかまします。そのまま家を出て近所の公園のトイレに向かい、そこでマシンガンをぶっぱなすというクレイジーなる行い。駆けつけた警官から逃れるために乗用車のエンジンをかけ、フリーウェイにて壮絶なカーチェイスを繰り広げた後、ジョージア州とサウスカロライナ州との州境で御用となりました。

 

 

 

この事件においてブラウン氏には実刑・懲役6年の審判が下されましたが、3年後の1991年に仮釈放が認められ、シャバに帰ってくることができました。

 

 

 

出所後は、ジェームス・ブラウン氏の音楽の変遷を時系列で追うことのできる最高な4枚組ベストアルバム「スター・タイム」をリリースするなど、すぐさまビジネスに回帰。

 

ジェームス・ブラウンのベスト盤「スター・タイム」

余談ですが、これを見た知人からは「何これ。お饅頭?」と言われてしまいました。

 

 

 

その後にはグラミー賞を受賞するなど誉れな話もあり、落ち目から這い上がろうと眼の色を変えてシノギに奔走していたのだろう・・・と思われます。

 

 

 

カップヌードルのCMの話が決まったのはそのへんの時期です。ブラウン氏としては得られる仕事はなんでもこなすぜという時期だったのかもしれませんね。

 

 

 

しかし日本の広告業界としては、よくもまあそんなタイミングで日本のCMに起用することができたもんだと驚嘆しきりでございます。バブル崩壊後とあってお財布のヒモを鎖に変えたいくらいに節約志向だったのではないかと思いますし。それに、牢屋から出てきたばっかりですからね、イメージ的によく使えたなあと(捕まってたなんて視聴者は誰も知らなかったかな)。今だったらいろいろウルサそうな気もしますね。

 

 

 

まあ、バブル崩壊って日本では前代未聞の経済危機ですから、なんかこう「元気出していこうぜ」みたいな世の気分もあったのかもしれませんね。そういうスタンスはなんだか日清ぽい感じもするじゃあありませんか。

 

 

 

あとは、以前だとギャラが高額すぎたけども服役明けでちょっと手の届く金額で受けてくれた、とかもあったり。想像ですが。

 

 

 

何にせよジェームス・ブラウン氏がこの日本において「オバちゃん」と揶揄されたりとか若干コミカルなアイドル的存在として親近感をもって認知されているのは、たぶんこのCMによるところが大きいのでしょう。

 

おまけ

 

ジェームス・ブラウンはその体に流れる血液の4分の1がアジア系(日系という説も)だという話があって、非常に日本を好んでくれていたようです。来日公演の回数も多いですからね。

 

 

 

私は実際に見たことはないのですが、元モーニング娘。の辻ちゃん加護ちゃんが、楽屋にいるジェームス・ブラウン氏を訪ねて「SEX MACHINE」のタイトルをサンプリングし「LOVEマシーン」と名付けた曲を出してよいかという許可を取りに行く…というのをテレビでやってたそうです。

 

 

 

どなたか当時の映像をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひこないだ新設した問い合わせ・連絡フォームからご連絡いただけますと幸いです。

 

 

 

そんな感じで日本のテレビにもちょいちょい登場していたりします。パルコの広告として使われたりもしていますしね。

 

パルコの広告(井上嗣也さん)

 

というわけで、今回はこのへんで。グッゴッ!

 

 

 

JAY

JAY

1984年生まれのファンク・マンガ・ライター。ソウルの帝王ジェイムズ・ブラウンを元にした「ファンキー社長」をはじめ、ファンク・ヒップホップをサンプリングした4コママンガを描き続けています。漫画アクションで「ファッキンJAYのマイルド・スタイル」を連載中。

こちらもどうぞ

こちらもおすすめ

TOP