エリカ・バドゥの名曲〜私の好きなの選んでみた〜

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こんにちは、JAY(@f__kinjay)です。ソウルの帝王ジェームス・ブラウンをサンプリングしたマンガ「ファンキー社長」を描いています。

 

2017年、6度目の来日を果たした歌手エリカ・バドゥ。その圧巻のパフォーマンスは、単独公演のお値段への反響もあって大いに話題になりました。

私がエリカ・バドゥを初めて聴いたのは、遅まきながら2002年くらい。「Baduizm」と、ディアンジェロの「Voodoo」とを併せて聴いたんですけど、そのとき感じたのは「異様だ!でも何度も聴いてしまう中毒性!」という感想で、当時はネオソウルとかそのへんの流れも全く理解していなかったのですが、これらとディアンジェロ「Brown Sugar」の3枚は繰り返してよく聴いたもんでした。

それからもちょいちょいエリカ・バドゥの曲は聴いておりましたので、今回はその中から私の好きな曲を紹介します。

 

JAYの好きなエリカ・バドゥ1.「Today The Earth Song」

1曲めはこちら「Today, The Earth Song」です。

 

エリカ・バドゥとしてのアルバムには収録されてない曲なのかな?たぶん。「Red star sounds 1:soul searchin’」というコンピレーションアルバムに収録されています。

どこにでもあるような日常の、とある「今日」を歌った歌…だと思います。よく晴れた休日、起きたらカーテンの隙間から穏やかな日差しが差し込んでいた、みたいな感じのイメージが目に浮かんできませんか。

なんか、エリカの優しさが溢れててすごく安心しちゃう曲なんですよね。

 

JAYの好きなエリカ・バドゥ2.「Afro Blue」

 

ジャズ界の風雲児ロバート・グラスパーの傑作「Black Radio」(2012)収録、エリカ・バドゥはフィーチャリングで参加しています。

ジョン・コルトレーンの演奏で知られるジャズのスタンダード「Afro Blue」のカバー(オリジナルはコルトレーンじゃないかも。でも誰かのCDの帯文で「コルトレーンがオリジナル」と書いてあったのを見ました)なのですが、アプローチは完全にエリカ・バドゥ色のネオソウル。

演奏は霧がかかったような神秘的な雰囲気に、残響豊かなエリカ・バドゥの歌声がくっと引き立っています。静かな曲ですがリズムがしっかりしてるためかとてもグルーブがあって、体を揺らしてノリノリになれる素晴らしい曲です。

ちなみに原曲はこんな感じ。

 

余談ですが、この「Black Radio」は本当に素晴らしくて、特に「Afro Blue」から次の曲「Cherish The Day」(こちらはダニー・ハサウェイの娘さんレイラ・ハサウェイが歌います)の流れは最高すぎて悶絶です。もう100回くらい聴いてますが飽きません。ヒップホップ好きにもジャズ好きにもソウル好きにも、すべての方にオススメできる屈指の名盤です。

JAYの好きなエリカ・バドゥ3.「Me」

エリカ・バドゥといえば「Baduizm」か「Mama’s Gun」が人気あると思ってるんですが、私が薦めたいアルバムは「New Amerykah Pt.1(4th World War)」です。中でも素晴らしいのが3曲目「Me」。

 

ミディアムで軽めのビートに乗るロイ・ハーグローヴの温かいホーン、イントロから最高。ジェイムズ・ポイザーのキーボードによるフワフワした幻想的な空間の中で、サンダーキャットのベースに支えられ、エリカの歌声がくっきりと浮かび上がっています。

そしてこの間違いない布陣を指揮しているのは西海岸のプロデュースチーム、Sa-ra Creative Partners。この方々は自分たちでもアルバムを出していて、エリカが参加している「Fly Away」ていう曲では近未来的なR&Bを披露してくれています。

「Me」は、タイトルのとおりまさに自分のことを歌っている感じの曲です。でもその描き方が、非常に真摯というか謙虚というか。ありのままを表して、それを自ら認めている、そんな感じなんです。エリカの人間性、性格、考え方がそのまんま出てるんじゃないかなーと思わされるような曲なんですね。

で、そういう「エリカの人となり」を感じるにあたって、このアルバム「New Amerykah Pt.1(4th World War)」は非常にいいんですよね。

前作「Worldwide Underground」から実に5年の空白の後にリリースされているんですが、その期間、レジェンドゆえの壁にぶつかったのか曲が書けなくなったそうで、また子育ても忙しかったということで長いお休みに入っていたのです。

お休みの間、超アナログ人間だったエリカはクエストラヴ(The Rootsのドラマー)からノートパソコンを贈られたのを機にDTM(パソコンで作曲すること)を始めたそうです。息子に使い方を教わりながら、GarageBandで作曲をしていたのだとか。

そして曲ができあがってくると、それをもってジミヘンのスタジオ「エレクトリック・レディ・スタジオ」でレコーディング。クエストラヴをはじめ、マドリブ、9thワンダー、ロイ・エアーズなどのプロデューサー陣を迎えて完成させたのが「New Amerykah pt.1」なのです(制作期間に入るかどうかくらいの頃にJディラとも連絡取っていたようですが、間もなくこの世を去ってしまいました。ディラへのトリビュートとして収録されている「Telephone」も、本当に素晴らしい曲です)。

ポリティカルな匂いが漂うアルバムタイトルのとおり風刺的な内容も多く、そして初めてDTMにチャレンジしたからか、前3作と比べるとリスナーが期待してたようないわゆる「ネオソウル」の枠組みを超えていて、意外性に溢れています。ヒップホップ色も強く、実験的な印象を受ける曲もあり、賛否両論だったみたいですね。

そういう実験的な作品を長いブランクの後にリリースするって、すごく勇気がいることだったんじゃないのかな、と思うんですね。不安も大きかったんじゃないかと。でも自分でDTMを始めてみたり、そういうシンプルな挑戦から新しい世界を拓こうとしているエリカの姿が目に浮かんでくるようなアルバムだと感じられるのです。

というわけで「Me」に限らず、ぜひぜひアルバム全体を聴いてほしいですね。最後の曲「HONEY」なんて、ただでさえカッコイイ曲なのにMVではエリカ・バドゥが数々の名盤ジャケをコスプレしていくので非常に面白くて最高ですよ。

 

 

おまけ

エリカ・バドゥ2017来日時のレポートでも書きましたが、とにかくバンドへの指示がすごいエリカ。それがちょろっと伝わる動画を見つけました。バンド止めまくりのエリカ様。上で紹介した「Me」の動画でも、けっこう指示飛ばしてますね。

エリカ・バドゥと酒飲みたい。

スナックえりか1

スナックえりか2

 

おしまい

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JAY

JAY

1984年生まれのファンク・マンガ・ライター。ソウルの帝王ジェイムズ・ブラウンを元にした「ファンキー社長」をはじめ、ファンク・ヒップホップをサンプリングした4コママンガを描き続けています。漫画アクションで「ファッキンJAYのマイルド・スタイル」を連載中。

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