第4話「メイシオさんの労働組合」【元ネタ解説】

読みもの

 

ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第4話「メイシオさんの労働組合」についてです。

メイシオさんの労働組合

 

ジェームス・ブラウン氏はそのキャリアの中で、バンドだけではなくラジオ局やレーベルなども所有していたそうです。そう考えると「ファンキー社長」自体がかなりノンフィクションに近い設定と言えるかもしれません。

 

そんなファンキー社長ジェームス・ブラウン氏の脳内に「労働組合」なんて観念は、まるで無かったんじゃないでしょうか。特にそのへんの記述のある資料などを読んだことはないですが、たぶんそうだろうなあ、と思ってしまいます。

 

 

 

the JB’sの結成と活躍

 

the JB’s(ザ・ジェービーズ)は、実はいろんな変遷を経ていて歴史も長いバンドなのですが、一般的には1970年以降のジェームス・ブラウン氏のバンドのことを指して呼ばれているようです。

 

1970年。その当時ギャラの支払いや過酷な興行日程に関してメンバーの不満はピークに達し、ジェームス・ブラウン氏に怒りをぶちまけます。

 

しかしそこに屈するブラウン氏であるはずもなく、なんとそのメンバーのほとんどを即時解雇してしまうのです。

 

日本では即時解雇が執行された場合、約一ヶ月分の給料にあたる解雇予告手当が支払われますが、当然そんな処置はなかったものと思われます。

 

ここで怒りの先導を切ったのが、メイシオ・パーカー。彼はこの時を境に、しばらくジェームス・ブラウン氏のもとを離れることになるのです。

 

というわけで、マンガではメイシオさんが労働組合の名前を「JB’sなんてどうだ」と提案していますが、実際にはメイシオ・パーカーはJB’sのオリジナルメンバーではないのですね。(彼はそのころMaceo Parker & All the King’s Menという独自のバンドでアルバムをリリースしてます)

メイシオさんの労働組合

メンバーたちを解雇したジェームス・ブラウン氏ですが、すでにショウの開始は目前に迫っています。そこで彼は、当時すでに目をつけていたのであろう、シンシナティにいるthe Pacemakers(ザ・ペースメーカーズ。自伝ではザ・ペースセッターズと記載)というバンドを呼び寄せるように指示を下します。

 

飛行機に乗ってキーンと合流、いきなりジェームス・ブラウン氏のステージに上がることになった新参バンドのメンバーこそが、あの有名なブーツィ・コリンズと、その兄キャットフィッシュ・コリンズなのでありました。

 

世にあるバンドのようにメンバーたちが主体的に「結成した」というわけではなく、ジェームス・ブラウン氏によって呼び集められたメンバー達がそうクレジットされるようになった…という感じだったようですね。

 

しかしこうした経緯でジェームス・ブラウン氏と運命を共にすることになった彼らの在籍期間は、まさしく氏のキャリアの中でも最高の黄金期といえるでしょう。

 

有名な「セックス・マシーン」、「スーパー・バッド」、「ソウル・パワー」などのリリースのほか、本サイトのゲロッパだけじゃない。「聴きやすい」JB楽曲選でも紹介した1971年パリのオリンピアでのライブも、このときのメンバーによるものです。

 

とにかくどの曲や演奏も非常にタイトで緊張感がビリビリと伝わり、腹の底から音の渦がノドに向かってせり上がってくるような悶絶感を味わえるので氏のファン以外の方にも是非チェックして欲しいところです。

 

しかし・・・上記のメンバーで興行していた期間はほんの1年ちょっと。71年にはブーツィ・コリンズをはじめとしてメンバーの刷新が行われ、舞い戻ったフレッド・ウェズリーなどを中心に再構築されました。そのあとに発表された楽曲はより成熟度が増し、どろっとした濃密な果汁がたっぷりとしたたる熟れた果実のようなファンクを披露してくれます。

 

「1970年」ってどんな1年?

 

前回、1968年がどんな1年だったのかについて軽くお話ししました。それと比べてみると、やや落ち着いた(というとおかしいですが)印象のある1年です。

 

テレビ番組「SOUL TRAIN(ソウル・トレイン)」の放映開始や、アポロ13号の搭乗員たちの生還劇などが主な出来事として挙げられます。相変わらずベトナム戦争が泥沼の様相を呈し、アメリカの株価も暴落して経済的にも立ち直れないという、なかなか明日の見えない状態だったようですね。

 

この年は、黒人の歴史を回想する「African-American History Month(黒人歴史月間)」がケント州立大学で初めて祝われた年です。もともとは「黒人歴史週間」だったのを「月間」に拡大するよう訴え、それを実現したのがこのケント州立大学の学生団体なのだそうです。

 

また、同年に同じケント州立大学で、ベトナム戦争への反対集会が開催されていたところを兵士が発砲し死傷者を出すという「May 4th事件」が発生しています。

 

う〜〜ん。。。ほんとに激しい時代のうねりに、戦慄せずにはいられません。。。

 

おまけ

 

作者のファッキンJAYがツイッターなんかで使っているプロフィール画像、これはthe JB’s(正確にはFred Wesley & the new JB’sと表記されています)のアルバム「Breakin’ Bread(ブレイキン・ブレッド)」のロゴをサンプリングしたものです。

 

the JB'sのBreakin' Breadをサンプリングしたオーサカ=モノレールのRumble'n Struggleをサンプリングしたロゴ…ややこしいですね

とはいっても私が自分のロゴをつくったのは、Breakin’ Breadを知る前だったのですが。

 

というのも、日本屈指のファンクバンドであるオーサカ=モノレールのアルバム「Rumble ’n Struggle」のジャケがまさにこのBreakin’ Breadをサンプリングしており、私はそっちを先に知ったというわけです。

 

後になって「あ、JB’sが元ネタなんだァ」なんて思ったものでした。お恥ずかしながら。

 

 

第4話「メイシオさんの労働組合」はこちら!

 

JAY

JAY

1984年生まれのファンク・マンガ・ライター。ソウルの帝王ジェイムズ・ブラウンを元にした「ファンキー社長」をはじめ、ファンク・ヒップホップをサンプリングした4コママンガを描き続けています。漫画アクションで「ファッキンJAYのマイルド・スタイル」を連載中。

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