ここではネタばれというかネタばらしとして、マンガの中で使っている元ネタについてちょっとお話しします。今回は第14話「ファンキー社長とミック監督」についてです。
ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとの邂逅
ファンキー社長の社員旅行、その終着点は西海岸。カリフォルニア州のサンタモニカでした。
第12話での映画の出来に感動したファンキー社長は、ミック監督にその感動を伝えます。前回ネタばれでは全く名前を出しませんでしたが、ミック・ジャガーは伝記映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」の製作プロデューサーとして携わっています。(なので、実際には監督ではありません)
ミック・ジャガーといえば、言わずと知れたイギリスのモンスターバンド「The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)」のボーカル。
世界中に熱狂的なファンを持つ同バンドですが、実はローリング・ストーンズとジェームス・ブラウン氏の間にはちょっとした出会いのエピソードがあります。
それが1964年にこのカリフォルニア州サンタモニカの地で開催されたコンサート「T.A.M.I. Show」での出来事なのです。
アメリカとイギリスの人気アーティストが集まる至高の祭典、出演陣はスモーキー・ロビンソンやマーヴィン・ゲイ、シュープリームズ、チャック・ベリーやビーチボーイズなど、垂涎モノの豪華さでした。
当時、「トライ・ミー」や「アウト・オブ・サイト」の大ヒットによって人気を得ていたジェームス・ブラウン氏でしたが、この日の大トリを務めるのはそれに輪をかけて広く支持を集めていた大物・ローリング・ストーンズ。
自伝「俺がJBだ!」では、
「彼らは本当に素晴らしい舞台をして客を引きつけた」
「俺たちはいい友達になった」
と話していますが、ライブ前のリハーサルの時点では
「俺を見て、ミックはリハーサルさえ嫌がった」
と、自らの圧倒的なリハーサルを自賛し、そしてショウが始まると
「ストーンズは舞台に出られないでいたーあまりに熱気を帯びていたからな。ミックはもう舞台に全然出たくなかっただろう。」
という、圧倒的な「俺が勝った」感を醸しだしています。く〜、たまりません!
ここは自伝の中でもかなりジェームス・ブラウン氏らしさが出ているので、ぜひ読んでいただきたいところ。
豊かな国では「負けず嫌い」で微笑ましいものかもしれませんが、貧しい暮らしを抜け出して自分の要求を通し続けてきた彼にとっては、常にこの「俺が最高」という信念を貫き通していかなければならなかったんでしょう。
で、この「俺が勝った感」が前面に溢れ出ているのは、やっぱりローリング・ストーンズがトリを務めたことが気に食わなかったから、なんですね。
ミック・ジャガー氏は後のインタビューで「あのとき、ブラウンは俺たちにちょっぴりムカついてた」と話しています。
「それは、ショウのトリを務めたのが自分ではなくストーンズだったから・・・」
このシーンは映画「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」でも、ミックさんの手によってとても細かく再現されています。
ミックさんの思い入れと壮絶なリスペクトがバッチバチ伝わってきますね。
半ギレ状態のブラウン氏が「生かしてイギリスには帰さんぞ」くらいの勢いでしょっぱなから超絶速度のステップを刻みながらマイクをガシと掴み、「You got your high heeled sneakers on!!」から始まるあのシーン(実際にはマイクは掴んでませんが)!
私なんかはもう、あのシーンで号泣してしまいます。
しかしこのような「おい、何で俺がトリやないねん。ムカつくなあ、おい・・・」という感じで出会ったミックさんが、自分の死後にその映画を作ることになるなんて、なんという数奇な運命なのでしょうね。
現実は小説より奇なり。
ドラマよりも、ドラマティックなものなんですね。
その後、ジェームス・ブラウン氏とミック・ジャガー氏はブラウン氏がお亡くなりになるまでお付き合いを続けていたそうです。「リトル・リチャードとジェームス・ブラウンからは、女性へのアピールを教わったよ。」なんて話したりもしていました。
ちなみに「T.A.M.I」とは「Teenage Awards Music International」という意味を持っているそうです。DVDも発売されています。ブラウン氏の最も有名なパフォーマンスのひとつですので、ぜひご覧ください。
おわりです。グッゴッ!