ファンキー社長

ソウルの帝王ジェームス・ブラウンをサンプリングしたマンガ「ファンキー社長」のホームページです。気ままに更新中

ジェームス・ブラウンの生きた時代を知るための映画たち

   

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こんにちは、「ファンキー社長」作者のJAYです。

 

 

 

突然ですが、黒人はかつて奴隷として酷使された悲劇的な過去をもっています。その後奴隷制を廃止することが決まってからも、長きにわたって続いた制度の名残は広大なアメリカの随所に残り、染み付いた価値観は差別という形で現在に至るまで黒人たちを苦しめているという現実があります。

 

 

 

1940年代後半、15歳のころに窃盗で逮捕されたジェームス・ブラウン氏は、懲役8年以上! という、私たちの感覚からすると到底信じられないような実に重たい罰を受けており(のちに保釈)、差別による不条理をその身をもって経験しています。

 

 

 

私は1984年生まれですが、私の少し下くらいの世代までは「アメリカは自由の国!」「憧れのニューヨーク、タイムズスクエア! 世界最先端!」みたいな価値観が刷り込まれていると思います。学校教育も、テレビなどのマスメディアも、そんな魅惑のアメリカの姿ばかりを発信してきました。

 

 

 

でも、多くの日本人は知らないアメリカがあります。たぶん、「いまだ差別は残っている」という認識は持っていても、具体的にどういうことが起きているかまでは分からないという人が多いのではないでしょうか(私自身がそうでした)。「バスやトイレは『黒人専用』のものを利用させられる」などはまだ知られているかもしれません。しかし「無実での不当逮捕、冤罪であっても罪が確定し投獄されてしまう」「抵抗すると射殺されることも珍しくなく、しかしそれで射殺した側が罪に問われることはない」「車を走らせていると対向車線からいきなり銃で標的にされた」「黒人を標的に、公然とリンチや放火を行う人たちがいた」・・・

 

 

 

そうしたアメリカの影を克明に描いた映画って、とてもたくさんあるんですね。

 

 

 

ジェームス・ブラウン氏が生きた時代。私の知らない時代。アメリカとは、どんな国だったのか。それを知りながら氏の曲を聴くのとそうでないのとでは感じ方も雲泥の差といえるでしょう。というわけで、ちょっとだけ紹介します。

 

 

「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」から見る南部の根深い差別の実態

 

 

このサイトをご覧いただいている皆さんに最も馴染みやすいのは「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」でしょう。なぜなら「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)をもつ男〜」で監督を務めたテイト・テイラーさんがメガホンを取っているからです。

 

 

60年代の南部ミシシッピを舞台に、黒人のお手伝いさんたちと白人ライターとの関係を中心に、当時の社会や黒人・白人それぞれの生活を描いています。

 

 

 

人種分離政策(ジム・クロウ法)の敷かれたミシシッピの片田舎で、彼女たちがどんな環境を生きていたか。

 

 

 

私はまだ、精子ですらない時代のお話・・・

 

 

ミシシッピ

 

ミシシッピていうのはここですね。以前、私がアメリカ南部を弾丸旅行したときに行こうとしたのですが、アトランタから遠くて泣く泣く諦めました。

 

 

 

もともとアメリカ南部はプランテーションで働く黒人が多かったことから奴隷制廃止や公民権運動への反対意見が根強いエリアなのですが、中でもミシシッピは特に差別意識が色濃く残っており、ジャズやファンクの聖地として知られた華やかなイメージとは全く異なる顔をもった土地でもあります。

 

 

 

ちなみに本作で超最高な登場人物ミニーを演じているオクタヴィア・スペンサーさんは、「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)をもつ男〜」にも出演。若きJBの叔母役を演じています。

 

 

さらに、ボビー・バードを演じたネルサン・エリスさんもチョイ役(しかし重要!)で出てます。

 

 

なんか、この映画でお手伝いさんたちが住んでる田舎の住宅地の雰囲気って、私がメンフィスでアル・グリーンの教会に行ったものの開いてなくて、漏れそうなウンコを堪えながらさまよった住宅地とソックリだったんですよね・・・

 

Around Al Green's Church

 

そっかあ、あの木々に囲まれた自然いっぱいの住宅地から、席が分けられたバスに乗って白人の住まいに通勤するんだなあ・・・バスを途中で降ろされるシーンがあったけど、家までの長い道のりは怖くて仕方なかっただろうな・・・なんて想像していました。

 

 

「プレシャス」・・・80年代のニューヨーク・ハーレムで生きる少女の物語

 

 

さて、お次はこちら「プレシャス」です。80年代後期のニューヨーク・ハーレムが舞台。

 

 

貧困、教育、虐待、肥満、HIVなど、当時からこの現在まで連綿と続くアメリカの大きな問題を題材に、ハーレムで生きる16歳の少女プレシャスの強さや決意を描き切っています。現状を変えるという判断さえもできない劣悪な環境で、重すぎるトラウマを背負うプレシャスが、ひとつの出会いから少しずつ自分を信じ始め、運命を自分の意思で変えていく・・・というお話。

 

 

 

彼女に訪れる苦難の数々は決してフィクションとしての演出ではなく、その当時のハーレムで起きていた日常の一片だったはずです。プレシャスに高カロリーなものを食わせたり暴力を振るったりする歪んだ母親役を演じた女優モニークさんは、なんとご自身が兄から性的虐待を受けた過去をもっていると話しています(プレシャスの生きる時代とは5年ほどズレますが)。虐待を止めなかった両親に対しても絶望し、その関係を絶っているのだそうです。

 

 

 

プレシャスは自分の肥満体型にコンプレックスを抱き、自尊心をもつことができずに苦しんでいます。肥満は「メタボ」とかいってポップな問題として見られがちですが、実態は極めて深刻です。これが「ダイエットしろよ」という話ではないということは、映画を観ていただけたらわかります。

 

 

 

 

ちなみに日本では先日、「貧しいほど肥満率が高い」「貧しいほど歯並びが悪い」などの統計が発表され話題を呼びました。

 

 

 

格差が広がり家族や地域の結びつきが薄らぎ、自己責任を論拠とした社会保障の削減は急速に進むなど、日本はどんどんとアメリカの背中を追っているように感じます(今に始まった話ではありませんが、最近顕著に思います)。

 

 

 

現状をひっくり返すようなミラクルは無くても、こうした彼女たちのストーリーにほんの少し目を向けることで、アメリカの後追いはやばい選択であることにも気づくことができますね。

 

 

 

ところでこの映画、福祉課の職員役でノーメイクのマライア・キャリーが出ています。トリンドル玲奈みたいでめちゃくちゃかわいいので、こちらも一見の価値ありでございますよ。

 

 

ハーレムといえば、アポロ・シアター。アポロ・シアターといえば、JB。JBといえば…

 

 

ということで、話をJBにつなげたい。しかしJBがアポロ・シアターでブリブリ言わせていたのは60〜70年代が主。プレシャスが生きる時代のJBといえば、ロッキー4に出演して「リヴィング・イン・アメリカ」が大ヒットし表舞台に復活したころです(その後、奥さんへの暴力やカーチェイスで逮捕されて獄中に)。

 

 

 

ロッキー4は、言わずと知れたシルヴェスター・スタローン監督の代名詞「ロッキー」シリーズの4作目。

 

 

 

ジェームス・ブラウン氏を語る上で「ロッキー」は外せません。先述の通り「ロッキー4」での出演が、落ち目になっていた彼の人気を再燃させる起爆剤となったからです。

 

 

 

舞台は、ロッキー最大のライバルであり最高の友であるアポロと、ロシアが生んだ殺人機械ドラゴとのエキシビジョン・マッチ。

 

 

 

リングに現れたドラゴを「アメリカ最高!」の賛歌で出迎えるJB。あまりにバブリーで即物的なアウェーの洗礼に唖然とするドラゴ。対戦相手のアポロは「ニューヨークに、行きたいかー!」でおなじみ「アメリカ横断ウルトラクイズ」のイメージサンプルとなったのではないかと思われるような、アメリカ国旗をあしらったド派手なボクサーパンツとガウン、ハットでキメ、ノリノリで登場します。

 

 

アメリカ縦断ウルトラクイズ

※Amazonより引用

 

 

このジェームス・ブラウン氏による前座、実に5分弱という長さでフルコーラスを繰り広げるのです。さらに、あの”ケープ・マン”ダニー・レイも出ていますね。

 

 

 

映画を観ていただけたらわかるのですが、これは現代で言うところの「死亡フラグ」がビンビンに屹立しています。

 

 

 

そういうわけで、好景気丸出しの演出もむなしく、アポロはドラゴの手によって帰らぬ人となってしまうのです・・・。

 

 

 

が、しかし! 彼の魂は人知れず受け継がれ、リングに導かれる日を待ちわびて胎動していたのです。

 

 

 

それを描いたのが、2015年末に公開された超待望のシリーズ最新作「クリード〜チャンプを継ぐ男〜」

 

 

そう、JBのファンキーな祝福を一身に受けて戦ったアポロの血を引く男がロッキーに師事して最強のボクサーへと生まれ変わる、次世代へのタスキ渡しを描いた熱きお話です。

 

 

 

ロッキーが当時を思い出し、「あのリヴィング・イン・アメリカの演出は良かったよな・・・」とか「あれでまたスターダムに返り咲いたよなあ」とか振り返るシーンなど、もちろんありません。

 

 

 

しかし、それでもいいんです。リヴィング・イン・アメリカによって高められたソウルは、アポロの息子アドニス・クリードに受け継がれているはずですから

 

 

 

したがって、タイトルも「クリード〜チャンプを継ぐ男〜」ではなく「クリード〜最高の魂(ソウル)を継ぐ男〜」に変えてはいかがかと提唱したい。

 

 

 

ところで少し話は逸れますが、この映画の公開イベントに行ったところなんとゲストに関根勤が現れました。そして彼は想いのままに、妻と娘への愛を語ってロッキーのモノマネをして壇上から去りました・・・個人的には、関根勤を肉眼で見る機会など一生ないと思っていたので大変興奮しました。

 

 

 

おわりに

 

 

いかがでしたか? 最後はただ単に私がロッキー観て興奮しただけの話になった感がありますが、映画っていうのは黒人音楽の発展した背景とかを視覚と聴覚で感じることができる素晴らしいものです。2016年はジェームス・ブラウン氏のドキュメンタリーも公開されるということで楽しみな話題が多いですね。

 

 

では、おしまい。グッゴ!

 

 

 

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